7月26日(土)に「古代のデザイン文字―金文を書く―」と題した岡本光平先生のワークショップが東京・八重洲ホールにて開催されました。
金文とは、中国古代、即ち殷周時代より秦漢時代頃までにつくられた青銅器に、鋳込まれ、あるいは刻された文字のことです。殷周時代の人びとは、官職に任命されたり、戦で功績を挙げたりして王から褒美を頂くと、そのことを青銅製の鼎(てい)や鐘といった器に記録して、祭祀や儀式の際に使用しました。当時「金」は「Gold」ではなく、「銅」あるいは「青銅」をあらわす言葉であり、そこで青銅器銘文のことを「金文」と呼ぶのです。
現在知られている最古の漢字は、牛の肩胛骨や亀の甲羅や腹側に占いの内容を刻んだ甲骨文です。金文は甲骨文からやや遅れて、殷中期頃から使われますが、文字構造は甲骨文によく似ています。鋭角的な甲骨文に対し、金文は柔軟かつ曲線と直線の組み合わせが絶妙で、しかも文字の内ふところの空間性が豊かです。
しかも文字どうしの距離の置き方はつかず離れず目に見えない導線のネットで結ばれているかのように、一字のデザイン力と画面レイアウト構成がとても現代的で優れています。このことは古代文字をそのまま書いても読めませんが、他の書体を書いたりする時に大いに役立つポイントです。
甲骨文が硬い骨の上に刀で刻んで書かれたのに対して、金文は筆で書いた文字を特殊な技術を使って器の鋳型に写し取るというように、書写技法の違いによるものなのです。初期の殷時代には「図象文字」として十文字にも満たなかったものが、周時代になってくると長文での記録も残されてきます。
今回のテーマ「古代のデザイン文字」では、この「金文」を用いて、現代の我々の「書」にどう活かしていくかを学びました。実際、多くの書家たちが「金文」をヒントにアート的表現作品を発表しているのを見受けます。先人達が残した文字をただ「学び」「マネる」だけではなく、各自がオリジナリティを見つけ出すかです。