2015年6月27日から28日の2日間、東京・新宿のハロー貸会議室において当協会アドバイザーで、映画タイトルデザイナーの赤松陽構造氏による『自由な発想と方法で題字を制作』と題したワークショップを開催いたしました。会場には協会員・一般を併せて定員枠を増やした23名の方々が受講され、2日間にわたり映画タイトルの仕事に向き合った画期的なワークショップとなりました。
1日目:映画の内容に合わせた題字の制作
赤松氏が解説するように、題字は映画の冒頭の印象を決める重要な要素になります。それは映画の流れの中に登場し、記号としての役割だけでなく、色や大きさ、配置は勿論、時間や動きも観客の印象に影響すると言います。
今回のワークショップでは、あらかじめお伝えした3本の映画作品から、1本を受講者が選択し、事前に観て題字のイメージを考えておく事から始まりました。
それぞれの映画は違った価値観をもっており、題字を表現するための要素は大きく変わってきます。例えば文字の大きさや位置、太さや文字を出す速度などでその映画作品の印象が違ってくるからです。
赤松氏は、映画は様々な価値観を持った表現物であり、ドラマツルギー(ドラマの製作手法、作劇論、演技論)を重要視したものから、既成の概念を超えてイメージを広げたものなど多様な作品があり、それに伴い題字もまた様々な表現を求められると言います。
つまり、映画の内容をどれだけ解釈できるかが重要であり、観客がその映画にどのような印象を持つか客観的な視点で考えなくてはいけません。そのイメージを題字で表現するための道具は自由。パレットナイフやハブラシ、クレヨンや手作り筆など、工夫を凝らした受講者も多かったです。
2日目:制作した題字の上映
各受講者が制作した題字が制作意図を発表した後に映像で流されました。この映像は技術者であり赤松氏のアシスタントを務めていただいた雄勝氏が前日に受講者から題字の配置や大きさ、フェードイン、アウトなどのイメージを聞いて徹夜がかりで制作していただいたのです。
映画タイトルは印刷物とは違い、映画本体の時間の流れの中に入るため作品の一部になっていきます。そのために何を重要な要素として制作したら良いのか考えなくてはいけません。さらに、題字は10秒ほどの間に出て消える事が多いため、細かいディテールは認識しずらいため、色や画面の中での位置も映画のイメージに直接影響する場合があると言います。各映画によって画面の幅と高さの数値比率が異なる画面アスペクト比(画郭)も承知しておかなければなりません。
ひとつひとつ流れる受講者全員の作品には、観るものに感動すら覚える出来映えとなっていました。そして何より自分の作品に自信を持って発表している姿に、このワークショップの成果を感じた瞬間でした。
この短い期間で学んだ映像という世界の奥深さや難しさ、そして楽しさを存分に味わった2日間になりました。赤松氏をはじめ、雄勝氏のお陰で素晴らしいワークショップにしていただいたことを心から感謝申し上げます。