グラフィックデザイナでありJDCAアドバイザーの美登英利氏による『筆文字を生かすデザイン』と題したワークショップを開催いたしました。
今回はデザインの現場を拝見する目的で事務所をお貸りしたため、受講者は優先した協会員で満席となりました。
協会がこれまで行なってきたワークショップでは、筆で文字を書くことを主体に行なってきましたが、今回はデザインをテーマにレイアウトの機能と本質を探った内容を企画いたしました。
私たちの生活においても、目的を実現させるために順序立てやプロセスを考えます。物事の進行を具現化する行為を「レイアウト」として当てはめてみると分かりやすいかもしれません。では、レイアウトは誰のために、何のためにあるのか?
モノ創りを成立させる場合、使う側の立場になったデザインが必要であることは言うまでもありません。作り手の身勝手さや自己満足だけでは多くの人々に理解されにくく、クライアントの要求に応えられなくなります。広告の中に存在するデザイン書道の分野でも、レイアウトは筆文字を生かすために重要な意味をもっています。
制作するものには訴求したい内容があり、そのために必要なテキストや写真なども存在します。それらをレイアウトしていく作業の場合、ただ見栄えよく素材を並べればいいわけではなく、想像力を掻き立て、訴求したい内容の理解を促進するものでなければならないということです。
美登氏が手掛ける絶妙なバランスのレイアウト構造には、人を惹き付ける重要なメソッドがあります。物事の配置や配列、順序立てがレイアウトであると仮定すれば、これが無秩序であったりすると目的を実現することが困難になります。
ひとつのデザインを作り上げる過程において、デザインのコンセプトが決まったらまずどんどん案を出していきます。このとき案出しのために描いていくものを「サムネイル」と呼びます。誰に見せるためのものではなく、全体像を把握するため、アイデア段階として形にしてみたものを指します。一つ一つを作り込むものではなく、良し悪しを考える前に形にしてみることで、頭の中が整理されていくわけです。
そしてサムネイルを描くなかでデザインの方向性が固まってきたら、そのうち面白いものを絞り込み、いくつかピックアップしてラフスケッチに起こしていきます。これはクライアントと打ち合わせをする時も、双方でぼんやりと持っている要望を固める手助けにもなります。ラフスケッチはあまりに作り込んでしまうと、逆に修正すべきポイントが分かりにくくなってしまう場合があります。大事なのは、アイデアの枠を限定しないこと。一つのアイデアにたどり着くためには、まずその裾野となる量が必要なのです。
デザインは明確な目的があり、具体的なカタチにしていく上で、さまざまな配慮がなされます。ユーザーのニーズが多様化する現代において、美しいだけでなく、規定やルールの中でニーズを満たす工夫こそ、レイアウトの考え方と言えるでしょう。