株式会社あかしや様のご好意により、奈良の本店2階にある多目的ルームをご提供いただき当協会アドバイザーで、現代書家の岡本光平氏によるワークショップを開催いたしました。
会場には協会員・一般を併せて27名の方々が受講され、筆の種類と使い方であらゆるイメージの線を創作しました。
私たちが書作品を書く時、文字の形と線をなんとなく同時に考え、直感頼りに筆を運んでいる時があります。岡本氏は「書は確かに文字に生きた線と好きな形を与える作業。ただ、その背後には文字の意味とイメージがある。どうしても形を先に意識してしまいがちだが、イメージのスタートを線そのものからはじめてみると逆に自由な世界が見えてくる」といいます。
さまざまな線は、見る人にイメージを喚起させる。筆を使いこなす技術技量はあるが、筆を変えれば線は変わる。岡本氏は「線は音楽と同じで見る側の生理に直接訴える力がある。線そのものは筆から」筆の種類と使い方であらゆるイメージの線を作り出します。
字形はいじらずに線を変えることで字は別物に見える
ワークショップを開催する30分ほど前、岡本氏に特長のある十数本の筆をチョイスしていただきました。講義では、用意した筆の特長を知るために文字を書きながらチェックしていきました。
ふだん私たちが字を書く場合、書きやすい筆を選んで、字の形をどうしようか、という発想から入ります。その結果、同じような字ばかりで、細部が気になるジレンマに陥った経験はよくあることです。
そこで岡本氏は、逆転の発想として、字形はむしろいじらずに線を変える、という方法にトライしました。線が変われば字は別物に見えるというものです。
その方法の一つとして「線を変えるためにはまず書きやすい筆をやめて、超長鋒筆、極太筆、羽根筆、植物筆などオモシロイ線が出る筆を選び、癖のある筆は味のある線が出て形以上に目を引く」というもの。
もう一つは、普段から使っている筆で、線の質を変えるには筆の持ち方と筆圧、速さを大胆に変えること。同じ筆からとは思えないほど違う線が生まれていきます。
岡本氏は、このような考え方を詳しく説明しながら受講者ひとりひとりの作品をチェック。熱心に質問するとともに、皆さんは可能性に満ちたオリジナル作品を次々と追求していきました。
ワークショップ終了後、岡本氏がチョイスした筆をはじめ、各自がさまざまな種類の筆を購入し、新たな表現を探る思いが伝わってきました。